岩手県上閉伊郡大槌町の吉里吉里地区と波板地区。鯨山からの眺望。(2015年5月17日浅川が撮影)
岩手県上閉伊郡大槌町の吉里吉里地区と波板地区。鯨山からの眺望。(2015年5月17日浅川が撮影)

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KS法クラスター分析と潜在混合分布モデル

 東京都立大学名誉教授の倉沢進先生は,クラスター分析のひとつの手法であるKS法クラスター分析を1986年に公表しました。社会地区分析の手法として,古くは因子分析が使われていましたが,因子分析には負荷量の小さな因子を過少評価してしまうという問題点があったため,クラスター分析が使われるようになっていました。

 

 当時のクラスター分析の主流は,階層的クラスター分析でした。しかしながら,階層的クラスター分析はデンドログラムなどを参考にして,析出するクラスター数を決めるのですが,その決定方法が恣意的であるという批判を避けることができませんでした。それに対して倉沢先生は,非階層的クラスター分析の手法を開発したのです。分析対象全体を考慮した場合,クラスター内の類似度が最も高く,クラスター間の類似度が最も低くなるクラスターを最適解とする,というのがKS法クラスター分析の立場でした。

 

 倉沢先生が開発したKS法クラスター分析は,批判もされませんでしたが,採用もされない状態にありました。そこで浅川が2008年に,「社会地区分析再考―KS法クラスター分析による二大都市圏の構造比較―」という論文を社会学評論に投稿し,その成果を改めて世に問いました。プログラムも公開し,誰もが使えるようにしたのですが,結果は倉沢先生のときと同様,誰からも批判もされませんでしたが,採用もされませんでした。

 

 本日,M-plusを最新バージョンのver8にアップし,それとともに『M-plusとRによる構造方程式モデリング入門』を再度読み直していたところ,「潜在混合分布モデル」を再発見しました(これまでも読んでいたはずですが,全く頭に入っていませんでした)。この「潜在混合分布モデル」は非階層的クラスター分析の手法のひとつだったのです。しかもクラスター数の決定方法は,「ブートストラップ法による尤度比の差の検定に基づく方法(Bootstrap loglikelihood test: BLRT)では,あるクラス数の場合(t)とクラス数を1つ減らした場合(t-1)の適合度の差が有意に異ならなくなるまでクラス数を増やし,有意な改善が見られなくなった時点で,クラスがtー1個であると仮定したモデルを採用」するというものでした(小杉孝司・清水裕士 2014: 233)。原理的にはKS法クラスター分析と,同じ立場にたつものでした。

 

 倉沢先生は30年も前に,このことを指摘しておられました。KS法クラスター分析の先見性に敬意を払いつつも,今後は横断的分析の場合*は潜在混合分布モデルを用いて社会地区分析を行い,統計学者と同一の俎上で議論したいと思います。

 

*なお,縦断的分析の場合は,別の方法を考える必要があります。詳しくは拙著(Tatsuto ASAKAWA, Changes in the Socio-Spatial Structure in the Tokyo Metropolitan Area: Social Area Analysis of Changes from 1990 to 2010, Development and Society, Vol. 45, No. 3, 2016, pp.537-562)をご覧ください。

日本社会学会にて報告してきました(2)

第90回日本社会学会大会@東京大学にて,二日目の11/5にも自由報告をさせていただきました。今回は「交通インパクトと都市・地域社会の構造変動」という5本の共同研究のひとつとして「(1)交通インパクトの社会地区分析と埼京線沿線地域の事例分析」を,日本大学の後藤先生と連名で報告させていただきました。

 

私の分析担当は,社会地区分析。東京大都市圏を含む関東地方の社会地区分析と,長野都市圏を含む中部地方の社会地区分析,そして福岡大都市圏・鹿児島大都市圏を含む九州地方の社会地区分析の3種類の分析を担当させていただきました。

 

通勤新線の開通と大都市間高速鉄道である新幹線の開通(延伸)が都市・地域社会の社会・空間構造にどのような影響を与えたのかを分析することが,共同研究の目標です。今回の学会報告で,与えられた「影響」は社会層ごとに異なるので,それを丁寧に記述することが肝要であることに,改めて気づかされました。この点を強調しつつ,分析結果は本年度中に原稿にまとめ,来年度中に書籍として出版する計画でおります。

日本社会学会で報告してきました(1)

第90回日本社会学会大会@東京大学にて自由報告をさせていただきました。初日の11/4(土)には,「大都市部における格差拡大の進行過程とその社会的帰結に関する研究」という6本の共同研究のひとつとして「(2)信頼感・社会関係資本に関する地域類型を考慮したマルチレベル分析:社会地区分析と標本調査の接合」というタイトルで報告させていただきました。

 

報告は(1)社会地区分析と(2)マルチレベル分析からなり,前者の主な知見は(1-1)都心部の変化としては,都市自営業層の解体による「時間差ジェントリフィケーション」が生じたこと,また(1-2)周辺部の変化としては,茨城県南部地域への製造業の集積と,埼玉県・千葉県へ物流関連事業所が集積したことが挙げられます。後者の主な知見は,(2-1)アンダークラスは他の階級より健康状態が悪いこと,(2-2)個人レベルの社会関係資本を保有する人ほど,地域レベルの社会関係資本の集積が多い地域に居住する人ほど,健康状態が良いことが挙げられました。

 

なお,当日浅川が配布した資料のPDFは下記よりダウンロード可能です。また,社会地区分析の結果は,ASAKAWA 2016として論文化しておりますので,ダウンロードしてご覧いただくことができます。

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日本都市学会で報告してきました

 2017年10月28日(土),石巻魚市場にて行われた,日本都市学会64回大会において,自由報告を行ってきました。研究発表I:都市の復興モデル,部会で報告させていただきました。今回の大会のテーマが「都市の復興モデルを探る」でしたので,まさに大会テーマに即した部会で報告させていただいたことになります。

 

 私の報告タイトルは「大槌町災害復興公営住宅入居者調査報告(2)ー食品摂取多様性調査による分析ー」です。岩手大学の麦倉先生,早稲田大学の野坂さんとの共同研究について,3名がそれぞれの切り口から報告しました。私が取り上げたテーマは,高齢者の食生活(フードデザート問題:食の砂漠問題)です。

 

 食品摂取多様性調査からは,低栄養状態に陥っている方を発見することができるのですが,低栄養状態と推測できる方は,60代で多く,70代以降で極端に少ない,という結果でした。この結果を,70代以降の栄養状態がよい,と楽天的に解釈することは危険だと,私は考えています。むしろ70代以降で低栄養である人が,調査に協力できないほど健康を害している可能性が高いのではないかと推測しています。この推測が正しい場合,今は健康な60代でも,食事を改善していかないと今後健康を害する人が大量に現れることになります。

 

 本設である災害公営住宅に住むことができたから,復興が完了した。そのように思う方もおられるかもしれませんが,実際は課題が山積みです。その課題のひとつに,フードデザート問題があります。この問題の解決に向けた取り組みが必要だと考えております。

 

 なお,今回の学会報告の内容は,明治学院大学社会学部付属研究所の『研究所年報』48号に掲載され,2018年3月ごろ刊行されます。刊行後は,論文はここから閲覧およびダウンロード可能となりますので,関心のある方はご覧ください。

 

WEBサイト更新

 研究室のWEBサイトを開設したのが2010年9月28日。KS法クラスター分析を実行するためのプログラム(当時はC言語で書いていました)を公開するために,WEBサイトを立ち上げました。初めはテキストエディターでHTMLを書くことでWEBサイトを作っていましたが,Macに乗り換えるとともに,当時Macに標準で付属していたiWebというソフトウエアでWEBサイトを作るようになりました。

 それから時は流れて,今ではスマホやパッドからの閲覧も増え,それらに対応したWEBサイト作成が必須となりました。残念ながらiWebはそこまで対応していないために,無料のWEBサイト構築サイトJIMDOさんを利用して,このサイトを立ち上げるに至りました。

 このサイトはWEBブラウザから改変が可能なので,端末を選ばす作業ができます。ですから,もっと頻回にアップすべきなのですが,なかなか実現できていません。今後は,もう少し頻繁にアップできるよう,心がけたいと思います。