官僚制の超克

 本日の演習1(ゼミ)では,山田真茂留「集まりとつながりの力ー集団・組織とさまざまな関係性」(船津衛ほか編『21世紀社会とは何かー「現代社会学」入門,恒星社厚生閣,2014)を素材に議論しました。この章の著者である山田真茂留先生は「今大切なのは,組織から離れたところで個人生活の充実を夢想することではなく,むしろ,個人生活を豊かにしてくれる組織のあり方について考えを巡らせることだろう。(p.46)」と指摘しています。「個人生活を豊かにしてくれる組織のあり方」とは何か。この点について議論しました。


 組織がどのような「あり方」になった場合に,個人生活の豊かさを損なってきたのか。ゼミ生のみなさんは,その点を考察することが難しかったようです。古典に学ぶならば,M.ウェーバーの官僚制論が参考になります。ウェーバーは合法的支配の純粋型として官僚制を捉えました。この官僚制が過剰になった時,「組織における集団的側面の負の部分が機能的側面を圧倒し,当初の組織的目標が見失われることになる(p.52)」と山田先生は指摘しています。またそれだけではなく,官僚制が過少になった場合にも組織社会的病理が発生するとも指摘しています。


 このような官僚制を超克する新しい組織の形態としてVoluntary Associationが注目され,社会関係資本(Social Capital),純粋な関係性(Pure Relationship)といった概念に関心が集まっていることがこの章では紹介されています。ゼミ生のみなさんには,この辺りの流れが理解しずらかったようでしたので,少し解説を加えさせていただきました。


 「個人生活を豊かにしてくれる組織のあり方」に,正解は今のところありません。正解の一つかもしれないものとして,Voluntary Associationや社会関係資本や純粋な関係性に注目が集まり,研究が進められているのです。今日のゼミでは,そんな「組織のあり方」に着目して議論しました。